その3 「リービング ラスベガス」

「リービング・ラスベガス」(1995年・アメリカ)
監督:マイク・フィッギス
出演:ニコラス・ケイジ、エリザベス・シュー、ジュリアン・サンズ、ヴァレリア・ゴリノ、ジュリアン・レノン

『ザ・ロック』 『あなたに降る夢』『フェイスオフ』のニコラス・ケイジと『バック・トゥザフューチャー2,3』『カクテル』のエリザベス・シューが、ボロボロになるまで追い込まれた大人の男女の儚い、絶望的な恋物語を好演。監督のマイク・フィッギスは元プロのミュージシャンで、音楽へのこだわりが随所に見られる作品。
テーマ曲ともいえる「My one and only love」の甘く、けだるい調べは、この作品のテーマにぴったり。
原作は若手作家のジョン・オブライエンが’91年に書いた自伝的小説。彼はこの作品の映画化契約をした後、自殺した。

女房と子供に逃げられ仕事も首になったアルコール中毒の男ベン(ニコラス・ケイジ)。すべてに絶望した彼の望みはただひとつ。酒を飲みつづけて死ぬこと。
家財道具を全部処分し、ラスベガスに移り、日々飲んだくれるベンが知り合ったのが、サラ(エリザベス・シュー)という、これまた心に傷を抱えた変態的なロシア系の男をヒモにもつ、若い娼婦。
どうしようもない男女が自然と結びついて二人の恋が切なく燃え上がっていく・・・。


これって、本当に男の理想郷のような生活を描いた退廃的な作品。ともかく主人公のベンには、酒を飲み続けて死ぬ以外やりたいことはなく、女にモテる要素ゼロなわけです。
でも、なぜか美しい娼婦のサラは彼に惹かれてしまう。もう、アル中でどうしようもない男の面倒を健気に看つづける。
二人が一緒に住むことになったときにベンは言う「俺に酒を飲むなと言わないでくれ」サラは約束を守り、彼がどんなに酔って暴れまわっても、一言も非難せず、ただただ面倒を看る。彼女の望みはただひとつ。「いつもそばにいてほしい」という事だけなのだ。

サラ役のエリザベス・シューという女優さんは実生活では確かハーバード大学を仕事をしながら卒業したという頑張り屋さん。顔立ちがずいぶん理知的でイメージ的にも、しっかりした学級委員長っぽいんだけど、そんな学級委員長さんが、ねえ、アンタ!娼婦だなんて、もう、男としては、た・ま・ら・な・い~!ですわ!!
同棲していても稼ぎはすべて彼女任せ。昼間から飲んだくれてもOKだし、どんなわがままなふるまいも、お母さんのように許してくれる!しかもHの義務も特にない。

それどころか、たとえ飲みすぎて役に立たなくなってしまっていたって、優しい学級委員長さんは、男を奈落の底に突き落とす、舌打ちなんか、絶対しない。(うーん・・・実際あれは、こたえる・・・)
プロの女性ならではのテクニックで、あんなことや、こんなことまでして学級委員長さんが力づけようとまでしてくれる!!!!  オー!!マンマ ミーオ!!

・・・個人的には映画を見ている途中からもう、ニコラス・ケイジがうらやましくて、うらやましくて仕方なくなってしまう!こんなに健気で可愛いらしい学級委員長さんの体にバーボンをかけて、おっぱいから滴り落ちる酒を舌ですくって舐められるのなら、アル中だってヤク中だって何にだってなってやるわーーぃ!!って感じ。

この映画、ほとんど細かい説明がない。なんでベンがアル中になったか。なんでサラが娼婦にまで身を落としたか。でも、きらびやかなラスベガスの町の片隅で、一人ぼっちの孤独に耐えていた男女が、傷を舐めあうように恋に落ちていく過程が、とても自然に描かれている。過剰過ぎない演出と、二人の演技力がすばらしいためだろう。

ニコラス・ケイジはこの役でオスカーを受賞。でも、エリザベス・シューという女優さんも、台詞なしで感情表現をする演技がすばらしく上手。彼女の演技がいいせいか、この映画、結構女性にも人気あるのですよね。観た人いたら、ぜひご感想を伺いたい!!

週末の夜、グラス片手に一人で見るのが一番お勧めな映画。もちろん、部屋の電気は全部消して、ボリュームは少し低めに。お酒はやっぱり、ジム・ビームかフォア・ローゼス・・・ちょっと安めのバーボンが合うでしょう。




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